この投稿はネタバレを含みます。
凛として時雨
本日のセトリ pic.twitter.com/VivpdsyYqq— sana (@hyper_plastic) 2018年6月11日
もう10年くらい凛として時雨のライブに行っているのだけど、今まで見た中で一番良かった。最近はもうライブレポとか書かなくなっていたけどあまりにも良かったのでこうして久々に感想を書こうとしている。
私はライブハウスの立ち見大嫌い人間なので、ホール指定席と聞いて小躍りしながら会場まで来たのだが、結局前の方が立ち上がりやがったので殺すぞと思いながら立って見た。TKの一挙手一投足まで見たいから。しかし立ち上がった割にまあまあ盛り上がりそうな1曲目「Chocolate Passion」は見渡す限り見事なまでにCRAZY仏頂STYLE、そうそう、これが時雨のライブだよな、と。
アルバム曲に人気曲を挟みつつ、6曲目「I’m Machine」、これが非常に良かった。JPOP的な聴きやすさを兼ね備えつつ凛として時雨のエッセンスがしっかりと混ぜ込まれていて、「MONSTER」以来のナンバーだと個人的には思っており、つまりはもともと凄く好きな曲なのだが、ホールの最高な音質とスペイシーな照明が切なくてエモーショナルな世界観を引き立たせていた。確かツアー中にはやってなくてとても残念だったのだが、もしかしたらライブハウスだったら十分に良さが出せなかったかもしれない。TKの痛烈なシャウトもズキズキと突き刺さった。
そんな風にドキドキさせられた上に「a 7 days wonder」、「Serial Number Of Turbo」と好きな曲が続いて、なんて恐ろしく美しい展開なのだろうか?もしかしたらこのままアコースティックギターを抱えてTremolo+Aとかやってくれるのでは?と思っていたのだがいつも通り「Abnormalize」が始まった。TKはサディスティックだ。ファンに100%の満足を与えてはくれない。
それにしても今回は、やっぱり東京国際フォーラムという場所が良かったと感じた。前半はそうでもなかったが、ピエールMC後のギターのくっきりとした音像が非常に良かった。ZeppやStudioCoastでは味わえない。ベースもよく聞こえた。各曲のいいところがちゃんと聞こえる。毎回ライブで聴き慣れている曲たちも全く違う風に聞こえる。リズム感の無い見知らぬ隣人の謎のノリも華を添えてくれる。
その上、何と言ってもセルジオ越後が聞けたのはすごい。10年通ったライブで聴けるのは2回目。それだけで泣きそう。これはTKなりのサッカー日本代表への応援ソングなのだろうか。なんとなく不安な気持ちになる色の照明たちとキラキラとした光を加えるミラーボール。成熟した音を鋭く響かせて、張り詰めたままラストへと向かっていく。TKのギターが心を締め付ける。演奏技術も演出も完璧。それでいて感情を揺さぶる演奏だった。間違いなく歴史に残るな、と確信した。
しかし、途轍も無かったのはラストの「#5」。
この曲の歌詞って、
壊せないものを手に入れた 僕は強くなった
壊せないものを手に入れた 僕は弱くなった?
だけど、今日の公演では
壊せないものを手に入れた 僕は強くなった?
壊せないものを手に入れた 僕は弱くなった
と聴こえた。
はっきりと、明瞭な、わかりやすい声で、強く「僕は弱くなった」と歌っていた。そこでもう泣いてしまった。守るべきものが出来てしまって、駆られていた焦燥感も感じなくなって、生きづらさ、自己嫌悪、劣等感とか、想像のエネルギーが絶たれていくことへの恐ろしさ、幸せなはずなのになぜか苦しい。守るべきものを壊して苦しかったあの時に戻って音楽を作りたい、なのに壊せない、守ることの方が幸せだという現実、自分は弱くなってしまったのだ、
この曲はそういう風に私には聴こえる。自分がそのような思いを抱えているからそういう風に重ねて想像しているだけなのだけど、彼の苦しみやジレンマが今までよりもはっきりと目の前に映し出されてしまった。美しくてとても残酷だった。それでも自分はギターを掻き鳴らして歌っていくんだ、そういって叫んだまま、時雨はステージを去って行ってしまった。ああ、もう傍観でライブが終わることは無いだろう、と思った。きっと彼が守るべきものを自ら破壊することはないし、それらが壊れてしまったとしても、自分の汚さや存在価値で悩み死にたいと吐露する必要はもうない。彼は強くなってしまったから。おそらく彼らが傍観を演るときはファンサービスでしかない。そして#5を超えるほど我々の心を動かすことはもう難しい。それほど#5は凄まじかったし、凛として時雨は完全に成熟している、その様子を目の当たりにしてしまった。こんなにいままででもっとも良かったと言わずして、なんと表現すればいいのか、感想を言うのも野暮だなとすら思う。でも言わずには居られなかった、明日仕事なのにこんな遅くまで。
