最近、「麻辣味」をよくコンビニをはじめ各地で見る気がする。花椒の存在を声高に主張している。誰かが流行らせているのだろうか?(肉バルが流行った時、やめた会社の先輩が「あれはぜったいコンサルが流行らせているよ」と言って居たのが印象的で、こういうのはコンサルの仕業だと思っている)
自分は麻辣味が好きなのでとても喜ばしく思っているのだが、麻辣味は好き嫌いが分かれるし飽きが来る味なので、クリームパスタや明太子味のように今後もレギュラーとしてひな壇の一角を獲得するとは思いづらく、おそらく一発屋として終わってしまうのだろう。麻辣味が居場所を獲得する前には、そこに誰かがいたはずなのだが、思い出せない。
そんなことをここ数日考えて居たのだが、私の中で結論が出ました。「パクチー」です。
先日、せっかく天気がよく暖かいのだからどっかにいきたいな、と初台にある好きなカフェに寄ってからオペラシティのアートギャラリーに寄った。昔は絵をみても「ふーん」「へー」くらいにしか思わなかったが、大人になって感受性が育ったのかだいたい何を観てもいちいち感動できるようになった。なので東京に来てから、休日の選択肢の1つとして、美術館にいく、というのが加わるようになった。
オペラシティはたまたま現在地の最寄りの美術館だったというだけで決めたので、どのような規模でどういう展示をやっているのか知らずに行ったのだが、1Fは冒険家・石川直樹の写真展、2Fは収蔵品展として木版画の魅力展をやっているのだという。1Fは石川直樹のトークイベントがあり入場規制がかかっており、まずは2Fに行けと案内され、まずは木版画を観ましょうとなった。これがすごいよかったのだった。
自分は過去に美術部ではあったが、部内でも最底辺だったため、版画といえば小学生の頃にやらされた、以外の印象が無く、木版画作家が特集できるほど居るのか、と失礼なことを思った。自分は水彩やカラーインクで透明感のある絵を描くのが好きだったため、わざわざ木版画という手段を用いて表現する動機がちょっとよくわからなかった。黒と白しか無い世界だと思っていたから。
確かに最初に展示されて居た磯見輝夫の作品は、私が小学生の時にやったものと同じカテゴリ(もちろんレベルは比べるまでも無い)にあるものだった。木の板を刃物で彫って墨で刷る、なるほど知っている。額のサイズもすごく大きくて、荒々しくダイナミックで、でも描かれて居る女性は繊細でなんだか悲しい姿で、解説は無いから意図はわからないけれど、観ているうちに辛い気持ちになってきた。
でも、その次に展示されて居た柿崎兆の版画は真逆の世界観なのだった。ミニマルで、水彩を重ねたかのように透明感があり、知らなければ版画だとはわからない。「湾岸」という作品がとてもよかった。深い蒼に映る光は確かに湾岸のそれである。なんて世界を忠実に観察できる人なんだ、と感動した。
川瀬巴水の浮世絵もすごくよかったし、公式サイトにも載っていた山中現の「冬の日」という作品もとんでもなく心を掴まれた。雪原の枯れた木々の寂しさと、木と木の間に確かにある緊張感や静けさを感じて高揚したのだった。李珉の「涙」という版画にも感情を動かされた。
というか全部よかった、面白かった。こんなことできるのか、と思った。すごく誰かに話したいと思った。誰か観にいってくれ。
